ヘブラー&グリュミオー・トリオらによるシューベルトの≪ます≫を聴いて

ヘブラー&グリュミオー・トリオらによるシューベルトの≪ます≫(1966年録音)を聴いてみました。

暖かみに溢れている演奏であります。陽光が燦々と降り注いているかのようでもある。
鋭さは全く感じられず、全体が丸みを帯びている。そのために、実に円満な演奏であると言えそう。それでいて、作品に対する踏み込みが甘いかと言えば、さにあらず。柔和でありながら、適度に逞しく、躍動感にも不足はない。そう、実に生き生きとしている演奏となっているのであります。
そのうえで、なんとも甘美な演奏が繰り広げられている。この辺りは、グリュミオーによる功績が大きいと言えましょう。そして、シューベルトに相応しい歌心に満ちている。その歌たるや、伸びやかにして、朗らかなものとなっています。
しかも、凛としていて、格調高い演奏となっている。この辺りは、ヘブラーの音楽性に依るところが大きいのでしょう。

音楽が重くなるようことは、皆無。そのうえで、心地よくて、暖かみや親しみに溢れている演奏となっている。
聴く者を幸福感で包み込んでくれる、なんともチャーミングな演奏であります。