ライナー&ウィーン・フィルによる、ブラームスの≪ハンガリー舞曲集≫とドヴォルザークの≪スラヴ舞曲集≫を聴いて

ライナー&ウィーン・フィルによる、ブラームスの≪ハンガリー舞曲集≫とドヴォルザークの≪スラヴ舞曲集≫の、それぞれからの抜粋(1960年録音)を聴いてみました。
≪ハンガリー舞曲集≫から8曲、≪スラヴ舞曲集≫からは5曲がピックアップされています。

ライナーの辣腕ぶりが発揮されている演奏だと言えましょう。
冒頭に収められている≪ハンガリー舞曲≫第5番から、覇気に富んでいて、推進力に満ちた音楽が耳に飛び込んできます。ウィーン・フィルをグイグイと引っ張りながら、音楽を奏で上げている。音楽が躍動している。そうやって生み出された演奏は、生気に満ちていて、力感に溢れており、逞しい生命力を宿した音楽となっている。舞曲に必要なリズミカルな運びも万全であります。
その一方で、ハンガリー生まれのライナーならではと言いますか、郷愁に満ちた感興がシッカリと表出されている。ただ単に力任せな音楽を展開するだけではなく、心からの共感を寄せながらの音楽が展開されているように思うのであります。これらの作品の「ツボ」がどこにあるのかを熟知していて、自然な息遣いが感じられる。その中で、時にむせび泣くような濃厚な表情を見せたりもする。メランコリックであったりもする。
とりわけ、異彩を放っているのがスラヴ舞曲の作品72-2。あの哀愁漂うメロディで綴られたナンバーを、ゆったりとしたテンポで運びながら、いたるところでルバートをかけて、連綿と歌わせてゆく。なんと切ない世界なのでありましょう。
と言いつつも、総じて、剛毅な音楽が展開されている。それでいて、疲れるタイプのものでもありません。男気タップリで、気分爽快、後味スッキリ。
そのようなライナーに、ウィーン・フィルは遮二無二ついていき、しかも、いつも通りの、潤いがあって艶やかで、品格の高い美音を鳴り響かせてくれています。そして、奏で上げられている音楽は、実にしなやか。

この演奏に込められているエネルギー、それは、無尽蔵であると言えましょう。そんな音たちが、逞しく弾け、生き生きと跳ね回り、艶美に舞い、ときに憂いを持って漂う。
いいやはや、聴いていて胸のすく演奏であります。そして、懐の深さが感じられる演奏でもある。
なんとも天晴な演奏であります。