ワルター&コロンビア響によるベートーヴェンの≪田園≫を聴いて
ワルター&コロンビア響によるベートーヴェンの≪田園≫(1958年録音)を聴いてみました。
録音された60年以上が経つこの演奏は、多くの音楽愛好家から愛聴し続けてられていると言えましょう。
その演奏内容はと言いますと、優しさに満ちていて、かつ、抒情性に富んだものだと言いたい。とても滋味に溢れてもいる。
その一方で、充分な逞しさを宿していて、必要十分な厚みを備えている演奏であるとも思います。おっとりしているようでいて、キビキビとしてもいる。そんなこんなのために、ただ単に偶数番号的な柔和な情趣を追っているのではなく、奇数番号的な頑健な性格にも事欠かない演奏となっている。そんなふうに思えてなりません。
とは言え、やはり、全編を通じて、ワルター特有の暖かみが滲み出ている。過度に激昂するようなことはなく、平穏な音楽世界が広がっている。その中に、十分な「劇性」を持たせたものとなっている。
(最終楽章での高揚感などは、かなり高いものがあると思います。)
なんという懐の深い演奏なのでありましょう。
聴く者を暖かく包み込むような音楽。それでいて、決して曖昧模糊としている訳ではなく、決然たる音楽が奏でられている。巧まざる壮大さが備わってもいる。そして、そこにワルターならではの優しさや慈しみが加えられてゆく。
定盤中の定盤だと言えましょうが、なんど聴いても大いに魅了される、素晴らしい演奏でありますよね!!