アンセルメ&スイス・ロマンド管によるR=コルサコフの≪シェエラザード≫を聴いて

アンセルメ&スイス・ロマンド管によるR=コルサコフの≪シェエラザード≫(1960年録音)を聴いてみました。

なんとも鮮烈な演奏が繰り広げられています。
眩いほどの色彩感が備わっている演奏となっている。それはまるで、音楽全体から輝かしい光を発散しているかのよう。そのうえで、木管楽器(特にファゴット)の洒脱な響きがまた、この演奏に独特の魅力を添えてくれています。
また、音楽全体が覇気に漲っている。音の激流が感じられる演奏となっている。しかも、必要以上に荒々しくなく、洗練味が感じられもする。
R=コルサコフも、アンセルメも、「音の魔術師」と形容されることがしばしばありますが、ここにはまさに、音の魔術師によってのみ為し得ることができた、と言いたくなるような音楽が響き渡っている。そう、絢爛豪華な音楽が鳴り響いているのであります。そのような音楽にドップリと身を浸すことのできる歓びが、フツフツと沸き上がってくる。
しかも、頗る豊麗な演奏となっていながらも、必要以上に豊満になるようなことはなく、キリっと引き締まっていて、凛とした佇まいをしています。輪郭線がクッキリとしてもいる。そのうえで、ここにある色彩感は、清々しさを伴ったものだとも思える。それは、「玲瓏な美」とも表現できそう。この辺りもまた、多くのアンセルメの演奏から感じ取ることのできる感覚だと言えましょう。更には、アンセルメの美意識のようなものが滲み出ているとも言いたくなる。

アンセルメの美質が如実に現れている、実に見事な、そして、聴き応え十分な演奏。
なんとも素敵な演奏であります。