アンセルメ&スイス・ロマンド管によるビゼーの≪アルルの女≫組曲を聴いて
アンセルメ&スイス・ロマンド管(SRO)によるビゼーの≪アルルの女≫組曲(1958年録音)を聴いてみました。
アンセルメらしい、キリッと引き締まった演奏となっています。そして、端正でもある。
充分に色彩的でありつつも、決してケバケバしい音楽とはなっていません。凛とした音楽が鳴り響いている。しかも、克明で、几帳面だとも言えそうなキッチリカッチリとした音楽づくりが示されている。それでいて、力感に不足はない。
更に言えば、玲瓏であって、ひんやりとした肌触りをしていると言えそうなのですが、決して冷淡な演奏にはなっていません。とりすました演奏になっていたりもしない。むしろ、瀟洒な雰囲気が漂ってきている。
そのうえで、オケの響きには、鄙びた雰囲気が濃い。SROの音は、録音によって、とても煌びやかであったり、とても素朴であったりと、振れ幅が非常に大きいように思うのですが、ここでは後者の傾向の強い音となっていると言えましょう。そのために、洗練された音楽というよりも、ローカル色の濃い演奏となっていて、それがまた、人肌の暖かみのようなものや、親しみやすさを生むこととなり、この演奏に独特の味わいをもたらしてくれている。
アンセルメ&SROというコンビの特質が詰まった、素敵な≪アルルの女≫。そんなふうに言えるように思えます。