メータ&ロス・フィルによる≪浄夜≫を聴いてみました

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メータ&ロス・フィルによるシェーンベルクの≪浄夜≫(1967年録音)を聴いてみました。

ロス・フィル時代のメータが大好きな私。
この頃のメータの演奏には、あまり迷いが感じらない。率直に音楽を奏で上げていて、表現が真っすぐ。そして、活力に満ちていた。
豪快で、豊麗で、色彩感が豊か。しなやかで、躍動感があって、艶やかで、生気に満ちている。ロマンティックで、グラマラスで、ゴージャス。
そのような音楽づくりをベースにしながら、聴き手に「音楽を聴く快感」を味あわせてくれる演奏が多かったように思います。
一言で言えば、カッコ良かった。

さて、ここでの≪浄夜≫も、上に述べたことが当てはまります。
まずもって、実に艶やかな演奏となっています。弦楽器のみの作品でありつつも、豊麗で煌びやか。この曲に備わっている「うねり」の表出も見事であります。アグレッシブで、精悍な表情をしていて、剛健な音楽となっている、とも言えましょう。
しかも、とても晴れやか。充分にロマンティックでありながら、変に粘ることが無く、ある種、ネアカな演奏となっている。全編を通じて、明快な演奏が展開されています。
そのうえで、ドラマ性のある作品を、要所を押さえながら生き生きと奏で上げることに長けている、といったメータの美質が、クッキリと現れている。
そんなこんなによって、激しさを備えていながら、威圧的になることがなく、親しみを持った音楽として鳴り響いている。なんとも魅惑的な音楽世界が広がっている。

この作品の音楽世界にドップリと身を浸すことのできる、素敵な演奏であります。