ロト＆ケルン･ギュルツェニヒ管によるブルックナーの交響曲第4番≪ロマンティック≫を聴いて
ロト＆ケルン･ギュルツェニヒ管によるブルックナーの交響曲第4番≪ロマンティック≫（2021年録音）を聴いてみました。
NML（ナクソス･ミュージック･ライブラリー）に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
初稿版を用いての演奏。
なんとも清々しいブルックナー演奏となっています。素朴さであったり、野人的な雰囲気であったり、といったものの薄い演奏でもあり、洗練味が感じられる。
とは言いましても、決して、ひ弱な演奏になっている訳ではありません。必要十分に逞しくて、生命力に溢れている。それでいて、過度に豊麗であったり、カロリーが高かったり、音楽が肥大化したり、といった演奏になっていない。キリっと引き締まった音楽が鳴り響いている。こういった感触を持った演奏となっているのは、初稿版を用いていることにも依るのでしょうが、それ以上に、ロトの音楽面での志向に依るところが大きいように思えます。
そのようなこともあって、颯爽としていて、晴朗な音楽世界が広がることとなっている。そういった演奏ぶりが、ブルックナーの交響曲の中でも明澄で朗らかな性格の強いこの作品には、似つかわしいように思えます。
そのうえで、音楽の流れに淀みがなく、躍動感や律動感を備えた演奏が展開されている。推進力にも不足はない。それがまた、溌溂とした感興を生むことになっている。このような性格は、全楽章において当てはまるのですが、殊更に、第2稿以降では全く別の旋律によって書き換えられることになった第3楽章において、顕著であるように思えます。また、最終楽章のエンディングでは、必要十分に壮麗な音楽が鳴り響いている。
清潔感に溢れ、新鮮味に満ちているブルックナー演奏。そのうえで、十分に精力的でもある。
ユニークな魅力を湛えている、素敵なブルックナー演奏であります。