コリン・デイヴィス&コンセルトヘボウ管によるベルリオーズの≪幻想≫を聴いて
コリン・デイヴィス&コンセルトヘボウ管(RCO)によるベルリオーズの≪幻想≫(1974年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
「ベルリオーズのスペシャリスト」として名を馳せたコリン・デイヴィス(サー・コリン)は、1960年代から80年代にかけてベルリオーズの主要なオーケストラ作品やオペラ作品を録音しています。その大半は、ロンドン響を指揮したもの。
ここで紹介する音盤は、サー・コリンによる「ベルリオーズ:管弦楽作品全集」に収蔵されているもの。≪幻想≫も1963年にロンドン響と録音していましたが、この「管弦楽作品全集」には、RCOとの再録音盤が収録されています。
(なお、この後、1990年にはウィーン・フィルを相手に3度目のセッション録音を行っており、そのことからも、サー・コリンのこの作品への深い愛情を感じ取ることができそうです。)
さて、ここでの≪幻想≫はと言いますと、端正であり、かつ、適度に狂気を孕んでいる演奏となっています。逞しい生命力に溢れている。
1970年代辺りまでのサー・コリンは、とても情熱的でありました。剛毅な音楽づくりがクッキリと刻まれてもいた。この≪幻想≫も、そのような側面の窺える演奏になっていると言えましょう。
それでいて、決して大袈裟な乱痴気騒ぎにはなっていません。何と言うのでしょう、背筋がピッと伸びていて、紳士的でもあるのです。音楽への真摯さがヒシヒシと感じられる。
更に言えば、荒々しさは感じられずに、折り目正しくて、凛としてもいる。鮮烈を極めたような尖鋭な演奏ぶりではなく、ふくよかさが備わっている。
そのうえで、エネルギッシュでドラマティックな演奏が繰り広げられている。音楽づくりが骨太でもある。とりわけ、第4,5楽章での推進力の大きさは、格別だと言いたくなります。
そのようなサー・コリンの演奏ぶりに対して、RCOがこの演奏に素敵な花を添えてくれているのがまた、なんとも嬉しいところ。実に芳醇な響きをしています。更には、上述した「ふくよかさ」も、RCOに依るところが大きいのではないでしょうか。
奥行き感のある、そして、聴き応え十分な≪幻想≫。
なんとも素敵な演奏であります。
なお、コルネット付の版が採用されています。但し、コルネットを過剰に強調するようなことはしていませんでした。