コリン・デイヴィス&ロンドン響によるベートーヴェンの交響曲第7番を聴いて
コリン・デイヴィス&ロンドン響によるベートーヴェンの交響曲第7番(1976年録音)を聴いてみました。
デイヴィスは、1970年代に、BBC響とロンドン響を振り分けながらベートーヴェンの交響曲全集を制作していましたが、結局、第9番のみが録音されずに未完成に終わっています(但し、1985年にバイエルン放送響と録音した第9番によって補完する形で、全集として纏められました)。
この全集でロンドン響が起用されたのは、≪田園≫と第7番の2曲。ここで紹介する第7番が、その演奏になります。
なんとも情熱的で、逞しく、生命力に溢れた演奏となっています。そして、輝かしい。それはもう、聴いていて胸のすく思いのする演奏が繰り広げられている。
ところで、デイヴィスは、温厚な演奏をする指揮者というイメージが強いかもしれません。しかしながら、1980年代に入る辺りまでは、熱気の籠った演奏を繰り広げることが多かった。そのために、「熱血漢」と呼ばれることも、しばしばでありました。そこへ行きますと、この第7番での演奏はまさに、熱血的なもの。熱い血潮が燃え滾っている、といった演奏が展開されています。それは、急速な楽章に限らず、アレグレットの指示となっている第2楽章においても然りで、激情的な演奏が繰り広げられている。そして、全曲を通じて、力こぶの入った豪放な音楽が鳴り響いている。最終楽章などは、凄まじいまでに熱狂的な音楽となっている。
と言いつつも、過度に速いテンポを採りながら、音楽を煽りまくる、といった演奏でもないのであります(リピートが全て励行されていますが、演奏時間は42分を超えている)。ドッシリと構えながら、演奏は進められている。そのうえで、内側からエネルギーが噴き出してくる、といった演奏であると言いたい。そのために、端正でありながら、熱くて頑健な演奏となっている。その辺りのバランスがまた、なんとも魅力的なのであります。
1970年代のC・デイヴィスの美質と、この作品の性格とが、鮮やかなまでにマッチしている演奏。
なんとも見事で、魅惑的な演奏であります。