ケンペ&BBC響によるマーラーの交響曲第4番を聴いて

ケンペ&BBC響によるマーラーの交響曲第4番(1957/5/14ライヴ)を聴いてみました。ソプラノ独唱は、ジョアン・アレクサンダー。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ケンペによるマーラー、とても珍しいと思います。正規録音では、F=ディースカウとの≪亡き子を偲ぶ歌≫があるくらいなのではないでしょうか。
ちょっと調べてみますと、ライヴ録音や放送用スタジオ録音に交響曲の第1,2,5番などがあるようですが、残されているマーラー録音が少量であることには間違いありません。更に調べてみますと、この第4番は、当初ワルターが指揮する予定になっていたものを、ワルターの体調不良によってケンペが引き継いで演奏したもののようです。

そのような、ここでのマーラーの第4番ですが、ケンペらしい堅実な音楽づくりを示してくれています。とても端正であり、均整の取れた演奏となっている。そのうえで、堅固な音楽づくりが為されている。
しかも、清廉な印象を受けるマーラー演奏だとも言いたい(特に、第3楽章において)。その点は、マーラーの交響曲の中でも、最も天上的な雰囲気を備えていると形容できそうなこの交響曲に似つかわしい。
もう少し妖艶で恍惚感があっても良かったのでは、という思いも湧いてきたりしますが、毅然とした佇まいが、なかなかに魅力的。そのような中から、少なからざるロマンティシズムが匂い立ってもくる。そう、「キリっとしたロマン」と呼びたくなるようなものが感じられるのであります。そのうえで、逞しさにも不足はなく、必要十分な力感やうねりを備えてもいる。

個性的なマーラー演奏だと言えるのかもしれませんが、とても貴重な記録であり、かつ、素敵な演奏となっています。マーラーを聴くうえでの「多様性」を感じさせてくれる演奏だとも言えそう。
このようなマーラー演奏に接するのも、ときには良いものであります。