パーヴォ・ヤルヴィ&チューリヒ・トーンハレ管によるメンデルスゾーンの≪イタリア≫を聴いて

この春にリリースされたばかりのパーヴォ・ヤルヴィ&チューリヒ・トーンハレ管によるメンデルスゾーンの交響曲全集より≪イタリア≫(2021年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

2019年にチューリヒ・トーンハレ管の音楽監督を務めているパーヴォ。同楽団とは既に、チャイコフスキーの交響曲全集を完成させていたり、ブルックナーの交響曲第7,8番をリリースしていたり、メシアンやジョン・アダムズの諸作などをレコーディングしていたりと、積極的な録音活動を繰り広げてくれていますが、このメンデルスゾーンでも、充実した演奏を聞かせてくれています。

ここでも、パーヴォらしい、キリっと引き締まった、筋肉質な演奏が繰り広げられています。とても凝縮度の高い演奏となっている。体幹がシッカリとしている演奏ぶりだとも言えそう。そのうえで、キビキビと音楽が進められてゆく。
オケの響きは、分離が頗る良い。そのために、テクスチュアの明瞭な音楽が鳴り響いています。カラッとした音楽となってもいる。例えば、ティンパニの音などは、とても乾いたものとなっている。しかも、覇気に満ちていて、生命力豊かな演奏が繰り広げられている。敏捷性が高くて、颯爽としてもいる。
そんなこんなによって、クリアにして、快活な音楽が鳴り響くこととなっています。
そのような中でも、とりわけ、最終楽章では押し出しの強さが際立っている。その推進力たるや、格別なものだと言えましょう。

明晰にして、痛快な気分に浸ることのできる演奏。ちょっぴりと峻厳さが漂いつつも、運動性に満ちていて、動きの機敏な演奏が繰り広げられているが故に、清々しさが感じられもする。
パーヴォならではの魅力を宿している、素敵なメンデルスゾーン演奏。そんなふうに言いたくなります。