ムーティ&フィラデルフィア管による≪春の祭典≫を聴いて

ムーティ&フィラデルフィア管によるストラヴィンスキーの≪春の祭典≫(1978年10月録音)を聴いてみました。

この音盤が、国内で初出されたのは1979年12月のこと。その直後に、当盤を購入しています。そして、これが、私が最初に聴き込んでいったハルサイ。「刷り込み」ということもあって、同曲のマイベスト盤であります。

ここでの演奏は、ムーティがフィラデルフィア管の音楽監督に就任する前、首席客演指揮者の任に就いて2年目を迎えていた時期のものになります。ムーティが同楽団の音楽監督に就任したのは、この録音から2年後の1980年のこと。それから12シーズン、音楽監督を務めています。
ということで、このコンビによる最初期の演奏ということになりますが、その演奏内容はと言えば、なんとも見事なもの。なにが、どのように見事かと言えば。

鮮烈で、明晰で、色彩感の鮮やかな演奏が繰り広げられている。躍動感に溢れている。更に言えば、音楽を畳みかけるようにして、ドラマティックかつスリリングに推し進められている。
その結果として、作品そのものから強烈な光彩が放たれている。
そのうえで、オーケストラは、舌を巻くほどに巧い。アンサンブルの乱れといったものは、まず見当たらない。そして、オーケストラ全体が束になってかかってきたときのパワフルさたるや、絶大なものがある。誠に豊饒で、輝かしい音楽が鳴り響いている。しかも、どんなに咆哮しても、美観が失われるといったことはない。
ここから聞き取れる演奏から、このとき既にムーティは、フィラデルフィア管をキッチリと掌握していたと言えそう。
なるほど、土俗性といいますか、バーバリズムのようなものは殆ど感じられません。しかしながら、洗練されているといった感じでもありません。音楽が乱れるようなことは皆無であっても、大いに暴れまくっていて、凶暴でもあるのです。そして、しびれるほどに痛快な音楽となっている。

実に素晴らしい演奏であると思います。
そして、最初にこのような素晴らしい演奏でハルサイに近づくことができたこと、実に幸福であったと思っています。