レヴァイン&シカゴ響によるホルストの≪惑星≫を聴いて

レヴァイン&シカゴ響によるホルストの≪惑星≫(1989年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

胸のすく快演だと言えましょう。竹を割ったような、明快さが感じられる。
冒頭の「火星」から、豪快にオケを掻き鳴らして、エネルギッシュに演奏を展開させてゆく。確信に満ちた足取りであり、剛毅でもあります。頗るゴージャスでもある。そして、切れ味が鋭くて、鮮烈でもある。
続く「金星」では、清冽にして、抒情性に満ちた音楽が奏で上げられている。音像がクリアであり、透明感もある。「水星」では、キビキビとした躍動感に満ちた演奏が展開されてゆく。音の粒がクッキリとしてもいる。
かように、各ナンバーの性格を、克明に描き分けてゆく演奏となっていて、この作品の音楽世界にドップリと身を浸すことができる。言い方を変えれば、ナンバーごとのコントラストや性格付けの明瞭さに舌を巻きながら、全曲を聴き進むことのできる演奏となっている。

驚くべきは、オケの精確さ。それはまさに、スーパー・オーケストラと称されることの多いシカゴ響の面目躍如たるものだと言えましょう。オケ全体の、アンサンブルの緻密さ、響きの濁りの無さ、ダイナミックスの広さは、唖然とするほどであります。マスとしての力強さが漲っている。更には、ソロイスティックな巧さも抜群。
音楽が全くベトついていなく、分離が良くて颯爽としているところも、シカゴ響ゆえだと言えるのではないでしょうか。そのことがまた、竹を割ったようだと感じられるこの演奏の印象を、強調することとなっている。

全体的に、レヴァインらしい、健康的でダイナミックな演奏だと言えましょうが、そのうえで、緻密さも備えている演奏。そのような演奏ぶりによって、≪惑星≫という作品が、実に映えてきている。
なんとも見事な演奏であります。