アバド&ロンドン響によるペルゴレージの≪スターバト・マーテル≫を聴いて

アバド&ロンドン響によるペルゴレージのスターバト・マーテル1984年録音)を聴いてみました。独唱は、マーシャル(S)とヴァレンティーニ=テッラーニ(MS)
NML
(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

なんとも清澄な演奏が繰り広げられています。作品そのものが、清らかで澄み切った雰囲気を湛えた音楽であるだけに、この作品が持っている音楽世界を余すところなく描き上げてくれている演奏だと言えましょう。
最後の「アーメン」や、ほんの一部(例えば、第8曲)を除いて、過度に劇的な表現を採るようなことはなく、敬虔な演奏ぶりが示されています。それでいて、かしこまった音楽になっている訳ではなく、息遣いが頗る自然で、とても伸びやか。どこにも誇張の見られない、真摯な演奏ぶりだとも言いたい。
更に言えば、冴え冴えとしていて、透明感があって、無垢な音楽となっている。清々しくもある。しめやかな雰囲気の中にも、颯爽とした風が吹いているかのよう。そのうえで、適度な流麗さが感じられもする。そう、表面的な効果を狙ったような素振りが見受けられない真摯さを備えていながら、とても流暢な演奏となっている。

独唱陣もまた、実に魅力的であります。
清潔感溢れるマーシャルの素晴らしさもさることながら、清らかさとコクの深さと陰影の濃さが感じられるヴァレンティーニ=テッラーニが、なんとも見事。そのような2人の歌いぶりは、ここでのアバドの音楽づくりにピタッと寄り添ったものとなっている。

この作品の魅力を存分に味わうことのできる、なんとも素敵な演奏であります。