小澤さん&ボストン響によるホルストの≪惑星≫を聴いて
小澤さん&ボストン響によるホルストの≪惑星≫(1979年録音)を聴いてみました。
小澤さんらしい堅実な演奏であります。折り目正しくて、端正。息遣いが自然で、音楽の流れにしなやかさが感じられる。そのうえで、音楽自体の磨き上げが丹念で、誠に美しい佇まいをしている。
しかも、生気が漲っていて、力感に溢れている。充分にダイナミックでもある。その一方で、「金星」や「土星」では、抒情性に満ちた音楽が鳴り響いている。「水星」では、落ち着いた演奏ぶりの中から軽妙さが浮かび上がってきている。その辺りのコントラストが、明瞭に表されています。特に、「土星」では、中間部で昂揚感の豊かな音楽が奏で上げられていて、このナンバー単体でのコントラストの妙が、なんとも鮮やか。
そのような小澤さんの音楽づくりに加えて、ボストン響ならではの芳醇な響きを味わうことができるのも、この演奏をより一層魅力的なものにしてくれています。決して開放的な輝かしさを感じさせるようなものではないのですが、安定感があって、ふくよかで柔らかみがあって、かつ、豊饒な音楽が鳴り響いている。
小澤さんの豊かな音楽性や、音楽への誠実さが、クッキリと現れている演奏。
この≪惑星≫は、数ある小澤さんの音盤の中でもトップクラスの出来栄えを示している佳演だと、私は考えております。