ブーレーズ&クリーヴランド管によるドビュッシーの≪夜想曲≫と≪海≫を聴いて
ブーレーズ&クリーヴランド管によるドビュッシーの≪夜想曲≫と≪海≫(1993年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。
ブーレーズらしい巧緻な演奏であります。輪郭性が明瞭で、精密でもある。
演奏全体は、硬質で、キリッと引き締まったものとなっています。そして、とてもクリア。その一方で、充分に色彩的でもある。
ここでの演奏からは、極彩色で彩られているというよりも、青白い光彩が放たれている、といった印象を受けます。響きに透明感がある。とてもピュアでもある。しかも、キラキラとした輝きが感じられもする。これは、音の粒がクッキリとしているためでありましょう。この辺りは、≪海≫の第2楽章において、顕著に感じられる。
更に言えば、凛としていて、精悍とした表情をしている。充分にドラマティックでもある。凛とした表情については≪海≫の第3楽章の冒頭部分などで、ドラマティックな感興は≪海≫の第3楽章の後半部分などで、はっきりと窺うことができましょう。
そのうえで、1990年代以降のブーレーズの演奏に特徴的な、丸みや柔らかさも加えられている。そう、実に鮮やかな演奏ぶりでありつつも、以前のブーレーズの演奏と比べると、過度に尖鋭なものとはなっておらずに、まろやかな音楽が鳴り響いているのであります。それ故に、音楽から芳しさが感じられる。この点については、≪夜想曲≫において、より一層はっきりと感じられます。
ブーレーズならではの演奏ぶりを堪能でき、かつ、1990年代以降のブーレーズの魅力がギッシリと詰まっている、とても魅力的な、そして、見事な演奏であります。