ブロムシュテット&サンフランシスコ響によるオルフの≪カルミナ・ブラーナ≫を聴いて

ブロムシュテット&サンフランシスコ響によるオルフの≪カルミナ・ブラーナ≫(1990年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ブロムシュテットらしい堅実な演奏が展開されています。
こけおどしであったり、大袈裟であったり、といった表現は一切見受けられません。実にケレン味のない演奏となっている。磨き上げが頗る美しくもある。
こんなにも端正な佇まいをしている≪カルミナ・ブラーナ≫も、珍しいと言えましょう。土俗的な雰囲気が薄くて、凛としている、そして、純音楽的な美しさを湛えている音楽が鳴り響いています。
それでいて、十分なる覇気が漲っている。この作品が持っている「逞しさ」に溢れています。と言いつつも、それは、決して誇張されたものではない。この作品の内側から滲み出てくる「逞しさ」を正確に汲み取った結果なのだと言いたい。そのうえで、拡がりのある音楽世界や、躍動感や、といったものが自ずと浮かび上がってくる、そんな演奏となっている。
しかも、例えば第14曲の「われら、居酒屋にあっては」などでは、音楽を存分に煽っていて、この演奏に大きなアクセントを与えてくれている。似たようなことは、第18曲の「私の心は溜息に満つ」にも当てはまる。しかもそれらが、全く唐突には思えない。それはひとえに、この演奏の全編にわたって、逞しい生命力が吹き込まれているが故なのでありましょう。

ブロムシュテットなればこそ成し得たのだと言いたくなる、ユニークな魅力を湛えた≪カルミナ・ブラーナ≫。
なんとも素敵な≪カルミナ・ブラーナ≫であります。