ブーレーズ&シカゴ響によるシェーンベルクの≪ペレアスとメリザンド≫を聴いて

ブーレーズ&シカゴ響によるシェーンベルクの≪ペレアスとメリザンド≫(1991年録音)を聴いてみました。

まだまだ後期ロマン派的な性格を持っていた頃のシェーンベルクが書き上げた作品、≪ペレアスとメリザンド≫。作曲の契機となったのは、ドビュッシーによる同名のオペラの初演。ドビュッシーによるオペラが世に出された翌年の1903年に、シェーンベルクが書き上げた唯一の交響詩、≪ペレアスとメリザンド≫が生み出されることとなりました。作品番号5が付けられていて、その番号は≪浄夜≫に次ぐもの。
それでは、この演奏を聴きましての印象に触れていきましょう。
ブーレーズらしい精緻な音楽づくりを土台としながら、ロマンティックな雰囲気も充分に描き出されています。
なるほど、ドロドロとした演奏ぶりではありません。むしろスッキリとした仕上がりになっている。更には、決して煽情的な演奏となっている訳でもない。それでいて、音楽から適度なうねりが感じられ、かつ、エネルギッシュでもあるのが、1990年頃のブーレーズらしいところだと言えましょうか。作品を突き放したところで演奏に当たっているというよりも、作品を包み込むような暖かみが、少なからず感じられる。そのうえで、キリっとしていつつ、充分にしなやかであり、色彩的な演奏となっている。端正で毅然としていつつも、必要十分に濃密でもある。

1990年代のブーレーズの美質に触れながら、この作品の魅力をタップリと味わうことのできる、素敵な演奏であります。