シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデンによるブルックナーの交響曲第8番を聴いて

シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるブルックナーの交響曲第8番(1994年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

実に美しい演奏となっています。しかも、品格の高さを伴っている「輝かしさ」が備わっている。
シノーポリの音楽づくりの特徴は、決して感情に流されないところにあると思っています。そう、とても精緻なのであります。それでいて、冷徹なようで、充分に情熱的でもある。音楽が本来的に持っている「うねり」にも不足がない。これらについては、ここでの演奏にも当てはまりましょう。
そのうえで、決して仰々しくなるようなことはないものの、ブルックナーならではの壮麗で広壮な音楽世界の広がる演奏となっている。やや遅めのテンポによって悠然と進められてゆく様は、「音楽による大伽藍」を仰ぎ見るかのよう。
しかも、過剰に煌びやかな演奏とはならずに、とても精妙な音楽が鳴り響いています。力感に不足が無い中で、常に美観が保たれていて、凛とした演奏が展開されている。また、第3楽章では、敬虔にして荘重な音楽が奏で上げられている。
更には、全編を通じてSKDの美質が存分に生かされている演奏だとも言いたい。そう、清潔感に溢れていながら、光沢のある美しい音たちで埋め尽くされている音楽が響き渡っているのであります。この演奏の素晴らしさの半分は(或いは、半分以上は)、SKDに依るのではないだろうか、とも思えてくる。

充実感いっぱいで、ブルックナーを聴く歓びを存分に味わうことのできる、そして、SKDの響きを堪能することのできる、なんとも素敵な演奏。そんなふうに言えましょう。