アンセルメ&スイス・ロマンド管によるラヴェルの≪ダフニスとクロエ≫全曲を聴いて

アンセルメ&スイス・ロマンド管によるラヴェルの≪ダフニスとクロエ≫全曲(1965年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

アンセルメならではの、精緻にして、怜悧さの感じられる演奏となっています。クリアで明晰で、目鼻立ちがクッキリとしている。
なるほど、この演奏からは、ひんやりとした肌触りが感じられます。冴え冴えとした空気に包まれている。キッチリカッチリとしていて、輪郭線が明瞭であり、楷書風の演奏だとも言えそう。とても知的な演奏だとも思える。
とは言いながらも、力感に不足はない。劇的であり、エネルギッシュな演奏が展開されています。充分に鮮烈でもある。とりわけ、最後の「全員の踊り」では、昂揚感の大きな、ダイナミックな音楽が鳴り響いている。
更に言えば、立体感があって、色彩豊かでもある。それは、決してケバケバしいものではなく、ちょっとクールで、透明感のある色合いとなっているのですが。
全体を通じて、クッキリとした音像が結ばれている演奏だと言えましょう。キリリとした佇まいをしていて、不純物を含まないピュアな音楽が鳴り響いている。そのうえで、バレエ音楽ならではのリズム感も、見事に表出されている。

アンセルメの美質が存分に発揮されている演奏。
聴き応え十分で、かつ、この作品の音楽世界にドップリと浸ることのできる、素敵な演奏であります。

※添付のジャケット写真は、NMLに掲載のジャケットとは別のものを採用しています。