マリナー&シュターツカペレ・ドレスデンによる管弦楽曲集を聴いて
マリナー&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)による管弦楽曲集(1982年録音)を聴いてみました。
収録されていますのは、フランス物とロシア物である下記の4曲。
ラヴェル ≪ボレロ≫
グリンカ ≪ホタ・アラゴネーサ≫(スペイン序曲第1番)
チャイコフスキー ≪イタリア奇想曲≫
シャブリエ ≪狂詩曲スペイン≫
マリナーとSKDという組合せも珍しければ、SKDによるフランス物とロシア物というのも珍しいと言えましょう。
もっとも、SKDは歌劇場に所属のオーケストラで、主な活動はオペラでの演奏であります。そして、歌劇場では、ドイツ物に限られている訳ではなく、イタリア物や、フランス物、ロシア物、はたまた東欧物やイギリス物など、多種多彩な国籍の作曲家の手によって生み出されたオペラ作品が採り上げられているのであります。
例えば私は、この歌劇場で最初に鑑賞したオペラはロッシーニの≪アルジェのイタリア人≫でありました。次いで鑑賞したのは、モーツァルトの≪魔笛≫とベートーヴェンの≪フィデリオ≫と、ドイツ物が続きましたが、その後は、ヴェルディの≪運命の力≫と≪オテッロ≫、更にはプッチーニの≪トスカ≫と、イタリア物が続く。イタリア・オペラが多いのは、私の嗜好によるものでありまして、ここの歌劇場がイタリア・オペラを採り上げるスケジュールに合わせてドレスデンの街を訪れる傾向が強いことが原因なのではありますが、かように頻繁に、イタリア物を採り上げています。その頻度は、イタリア・オペラほどではないにしても、フランス物やロシア物のオペラを上演することもしばしば。つまり、フランス音楽もロシア音楽も、SKDの団員からすると、ごく身近な存在なのであります。
そのようなSKDを、マリナーが指揮をしての、ここでのフランス物とロシア物。
マリナーらしく、手際よくまとめられた演奏であります。とても小気味が良く音楽が進んでいる。そのうえで、大袈裟な音楽づくりとは対極にあるような、爽やか演奏となっている。こじゃれた演奏となってもいる。
ここに並んでいる作品は、色彩感のある演奏によって映える音楽であるとも言えそう。しかしながら、ここでのマリナーによる演奏は、シックなものとなっています。そして、凛とした音楽が奏で上げられている。
そのような演奏ぶりに、SKDの清潔感溢れる美音が加えられる。その響きは、ここでマリナーが志向している音楽にピッタリであると言えそう。
独特の魅力を持っている、素敵な演奏であります。