レーゼル&ゲヴァントハウスSQ団員らによるシューベルトの≪ます≫を聴いて

レーゼル&ゲヴァントハウス弦楽四重奏団員らによるシューベルトの≪ます≫(1985年録音)を聴いてみました。
この当時のゲヴァントハウスSQの第1ヴァイオリンは、カール・ズスケ。

レーゼルによる格調高いピアノも素晴らしいのですが、この演奏をリードしている(或いは、この演奏の特徴の核を担っている)のはズスケだと言えましょう。
真摯で、清潔感溢れる演奏が繰り広げられています。演奏全体が、キリっと引き締まっている。そして、楽器間の対話が実に緊密。妙なる調和が図れているとも言いたくなるほどに、均整の取れたアンサンブルが展開されている。
しかも、声を決して荒げることなく、聴き手に親密に話しかけてくるような演奏ぶりとなっている。暖かみの音楽が、聴く者を包み込んでゆく。気品に満ちている。薫り高くもある。そのうえで、力感にも不足はない。音楽が逞しく息づいている。音楽が生き生きとした表情を湛えている。
これまでに述べてきた性格は、まさに、ズスケによる多くの演奏に共通したものだと言えましょう。しかも、それらの特徴が、この≪ます≫では、最大限に発揮されているように思えるのであります。
更には、レーゼルの粒立ちがクッキリとしていて、凛とした響きに包まれているピアノがまた、実に美しい。そして、ズスケらの弦楽パートと見事に調和している。

なんともチャーミングな演奏であります。
ズスケは私の大好きなヴァイオリニストの一人であり、わが国でも人気は高いように思います。しかしながら、この音盤、今一つメジャーとは言い切れない存在なのではないでしょうか。
1人でも多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい、素敵な演奏であります。