ギレリス&コーガン&ロストロポーヴィチによるチャイコフスキーの≪偉大な芸術家の思い出≫を聴いて

ギレリス&コーガン&ロストロポーヴィチによるチャイコフスキーの≪偉大な芸術家の思い出≫(1952年録音)を聴いてみました。

旧ソ連の3人の名手が集まってのトリオ。録音されたのは、ギレリスが36歳に、コーガンが28歳に、ロストロポーヴィチが25歳になる年のこと。
覇気に満ちている、勇壮な演奏であります。雄渾にして、強靭な音楽が鳴り響いている。とりわけ、第2楽章の終曲などは、途轍もなく壮麗で輝かしい音楽となっています。
と言いつつも、必要以上に作品を肥大化させたり、変に権威ぶったり、といったような演奏になっている訳ではありません。伸びやかで瑞々しくて、率直な音楽が奏で上げられている。颯爽としていて、清々しくもある。
そのうえで、3人が迸る情熱をぶつけてゆく。その結果として、実にスリリングが鳴り響くこととなっている。エネルギッシュにして、ドラマティックでもある。
しかも、充分にロマンティックであり、ときにメランコリックであったり、沈鬱であったり、更には、軽妙であったりもする。

全編を通して、スケールが大きくて、起伏に富んでいて、雄弁な音楽が鳴り響いている。目くるめく演奏となってもいる。
名手3人の妙技や豊かな音楽性が反映されている、なんとも素敵な演奏であります。