ツィマーマンによるショパンの≪バラード≫全4曲を聴いて

ツィマーマンによるショパンの≪バラード≫全4曲(1987年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

雄弁にして、闊達な演奏となっています。ドラマティックで、エネルギッシュでもある。そのうえで、きめ細やかで、多感な演奏が繰り広げられている。玲瓏な音楽となっているとも言いたい。
ここで鳴らされているのは、研ぎ澄まされた感性に裏打ちされた音楽。多様な性格を併せ持った演奏が繰り広げられています。
儚くて、それでいて力強い。瞑想的でいて、実在感に溢れている。哀感に満ちていながら、情熱的でもある。繊細でいて、豪壮でもある。ひんやりとした手触りをしていそうで、その裏側には熱いパッションが漲っている。そのような、一見相反するような様相が、なにも矛盾することなく同居している。
しかも、音楽の流れは、自然で滑らか。更に言えば、躍動感に満ちていたり、弾力味を帯びていたりする。必要に応じて、ダイナミックでもある。
そして、息遣いが実に豊か。全編を通じて、豊饒な音楽が鳴り響いている。

ハッと息を飲むような瞬間が、次から次に訪れるような演奏となっている。
ツィマーマンの豊かな音楽センスを強烈に感じ取ることのできる、なんとも魅力的な演奏であります。