ツィマーマン&ラトル&ロンドン響によるベートーヴェン≪皇帝≫を聴いて

ツィマーマン&ラトル&ロンドン響によるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集から≪皇帝≫(2020年録音)を聴いてみました。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

録音当時、64歳だったツィマーマンと、65歳だったラトル。現代のピアニスト界と指揮者界を代表する両巨匠が、円熟期を迎えた時期に共演して制作されたベートーヴェン。その演奏からは、力み返ったところは一切感じられず、大袈裟な表現も見受けられない。泰然自若とした演奏が繰り広げられています。
テンポは、速からず遅からず。キリっとしていながら、ふくよかさが感じられる演奏となっています。スッキリとしていて、スリムな体型をしていながらも、タップリと音楽が奏で上げている。冴え冴えとしていながらも、風格豊かな音楽が奏で上げられている。清冽な音楽世界が築き上げられていて、かつ、充分に気魄が漲っている。
そのうえで、最終楽章のロンドでは、ツィマーマンとラトルの両者が備えている敏捷性の高さが、クッキリと表されている。音楽が存分に弾んでいるのであります。
第2楽章では、抒情性の豊かさが存分に現れてもいる。
そのような演奏ぶりが、この作品の魅力を、ごく自然に提示してくれている。

≪皇帝≫の魅力を心置きなく味わうことのできる、素敵な演奏であります。