ヨッフム&バイエルン放送響によるブルックナーの交響曲第5番を聴いて

ヨッフムがベルリン・フィルとバイエルン放送響とを振り分けながらDGレーベルに制作したブルックナー交響曲全集から第5番(1958年録音)を聴いてみました。
オーケストラは、第1,4,7,8,9番の5曲でベルリン・フィルが起用され、第2,3,6番とこの第5番の4曲ではバイエルン放送響が起用されています。

この全集、大半は1964-66年の2年間に録音されていますが、第5番のみは1950年代の録音。なるほど、他の曲での演奏と比べると、どことなく若々しさや瑞々しさが感じられ、覇気が漲っているように思います。
更に言えば、スッキリとした爽やかさのようなものすら感じさせてくれるブルックナー演奏となっています。これは、オーケストラが設立されて間もないバイエルン放送響(1949年の設立)だったというところも影響しているのかもしれません。相手がベルリン・フィルだったならば、もう少し濃厚で重厚な演奏になっていたのではないでしょうか。
そのうえで、やはりと言いますか、確信に満ちた演奏が展開されています。決して軽々しいものではない。音楽が素通りするようなこともない。重量級ではないのですが、充実感いっぱいなブルックナー演奏が繰り広げられている。
チャーミングなブルックナー演奏。更に言えば、とても聴きやすい第5番の演奏。重層的な構造を採りながら、頑健で厳粛な性格を宿している第5番で、このような演奏を成し遂げているというところが驚きでもあります。しかも、ズシリとした手応えを感じさせてくれもする。

独特な魅力を持った、素敵な演奏であります。
そして、ブルックナーを苦手にしている方に、お薦めできる演奏だとも言えるように思えます。