ムーティ&フィラデルフィア管によるブラームスの交響曲第4番を聴いて
ムーティ&フィラデルフィア管によるブラームスの交響曲第4番(1988年録音)を聴いてみました。
ムーティらしい流麗な演奏となっています。豊かな歌心が示されていて、流れが誠に美しい。明朗な演奏だとも言えそう。
それでいて、ムーティにありがちなカラフルでゴージャスな雰囲気を湛えていたり、ボリューム感があったり、エネルギッシュかつ劇的であったり、といった演奏とは一線を画しており、むしろ、しっとりとした質感を持っている。奥床しいと言っても良いかもしれません。更には、ロマンティックで、センチメンタルでもある。特に、センチメンタルという感触は、第2楽章において強く感じられます。
ムーティとしては、特に、まだ50歳を迎える前の(この演奏当時、ムーティは47歳でありました)若きムーティとしては、ちょっと異質な演奏であるかもしれません。
その一方で、ここで示されている演奏ぶりは、ブラームスに相応しいものであるように思え、とても好ましい。すなわち、過度に重苦しくなることはないものの、どっしりと構えた演奏が繰り広げられている。しかも、そこからは風格の豊かさが感じられもする。
今や、世界の楽壇に君臨するマエストロの一人との評価を不動のものにしていると言えそうなムーティ。その階段を登ってゆかんとしている姿が、ここに刻まれているよう。そう、ムーティという指揮者の演奏ぶりを俯瞰する上で、貴重な演奏だと言いたい。
また、そのような観点で眺めなくとも、とても魅力的なブラームス演奏となっていると思えます。