シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデンによるシューベルトの≪ザ・グレート≫を聴いて
シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるシューベルトの≪ザ・グレート≫(1992年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。
この音盤は、シノーポリがSKDのシェフに就任した年にセッション録音されたものになります。そして、SKDのシェフの座には、彼が急逝する2001年まで続いてゆくのでありました。
このコンビによる初録音、それは、1987年になされたブルックナーの≪ロマンティック≫だったのではないでしょうか。当初は、水と油の関係なのではないかと訝っていたのですが、それがどうしてどうして、なんとも見事なコンビでありました。シューマン、ブルックナー、R・シュトラウス、シェーンベルクなどの新ウィーン楽派や、リストや、ウェーバーやワーグナーの序曲集等々、彼らが遺してくれた一連の録音は、どれも逸品ばかりだと思っています。
この≪ザ・グレート≫もまた、シノーポリによるキリッと引き締まった音楽づくりをベースにした魅力溢れる演奏となっています。それはもう、贅肉を削ぎ落した筋肉質な演奏ぶり。そして、明瞭で明快でもある。清潔感を伴ってもいる。
それでいて、シューベルトならではの歌心に満ちていて、この作品に相応しい豊麗で美麗な演奏が繰り広げられている。しかも、あくまでも豊満にならない範囲で。
あまり分析的にならずに曲想をガシッと鷲掴みしながらも、凝縮度の高い音楽が展開されているのも素晴らしい。流れに淀みがない。
そのようなシノーポリの演奏ぶりにSKDの底光りするような美音が加わることによって、演奏により一層の魅力的なものとなっている。とりわけ、音楽が「洗練された華麗さ」と称したくなるような性格を帯びてくるには、これはひとえにこのオケが持っている美質の賜物であると言えましょう。そして、とても清冽でもある。
そのうえで、音楽の息遣いは実に自然で、しなやかで伸びやかである。しかも、必要十分なスケールの大きさも兼ね備えている。
更に言えば、何から何までが美しい。そして、気品に満ちている。それは、オケの響きも、音楽的な佇まいも。
作品の魅力とシノーポリ&SKDの魅力とを堪能することのできる、聴き応え十分で、しかも頗るチャーミングな演奏。そんなふうに言えようかと思います。