ギーゼキング&カラヤン&フィルハーモニア管によるグリーグのピアノ協奏曲とフランクの≪交響的変奏曲≫を聴いて
ギーゼキング&カラヤン&フィルハーモニア管によるグリーグのピアノ協奏曲とフランクの≪交響的変奏曲≫(1951年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。
グリーグの冒頭では、なんとも鮮烈な音楽が鳴り響いている。スリリングにして、ドラマティックな音楽世界が、目の前に一気に広がる。それは、この協奏曲に求められている音楽世界そのものだと言えそう。
しかしながら、全くこけおどしな音楽にはなっていません。浮ついていたり、軽はずみであったり、といったことも感じられない。むしろ、凝縮度が高くて、キリっと引き締まっていて、端正な音楽となっている。このことは、ギーゼキングにも、カラヤンにも当てはまる。
その後は、緩急の差を大きく採りながら、濃密な音楽を奏で上げながら、ロマンティックにして、スタイリッシュな演奏を展開してゆく。とりわけ、速いパッセージでの、音の粒が鮮やかでポキポキと奏で上げてゆくギーゼキングの演奏ぶりは、痛快でもある。それでいて、例えば、第1楽章の第2主題ではガクンとテンポを落とし、情感豊かで詩情味たっぷりに描き上げながらも、過度に粘るようなことはなく、情に溺れるようなこともない演奏ぶりなどは、聴いていて惚れ惚れとしてくる。なかんずく、詩情の豊かさでは、第2楽章が、この演奏の白眉と言えましょう。その一方で、第3楽章では、律動感の高さが光っている。
そのような演奏ぶりでありつつもと言いましょうか、ここでのギーゼキングの演奏は、
一点一画も疎かにしない楷書風なものだと言えましょう。このことは、ギーゼキングの多くの演奏から感じられることだと思えるのですが、このグリーグも例外ではないのです。キリっと引き締まっていて、端正な音楽が紡ぎ上げられている。それでいて、力感も十分な音楽が。この辺りは、ギーゼキングの面目躍如たるところだと言えましょう。
そのようなギーゼキングをサポートしているカラヤンの、溌溂としていて、かつ、ドラマティックな演奏ぶりもまた、実に見事。
そのようなグリーグでの演奏に対して、フランクでは、ギーゼキングの楷書風な音楽づくりが、より一層強く現れているように思えます。端正な演奏ぶりは、グリーグでの演奏以上。
しかしながら、余情の入り込むすきが無いように見えながらも、リリカルな風情にも不足はない。堅苦しい表情をしている訳ではなく、必要十分に軽妙でもある。
ギーゼキングの妙技を存分に味わうことのできる、素晴らしい音盤であります。