チョン・キョンファ&デュトワ&モントリオール響によるラロの≪スペイン交響曲≫を聴いて

チョン・キョンファ&デュトワ&モントリオール響によるラロの≪スペイン交響曲≫(1980年録音)を聴いてみました。

チョン・キョンファは、情熱型のヴァイオリニストだと言えるように思うのですが、この演奏ではそのような側面が認められつつも、理知的でもあるように思えます。すなわち、知情のバランスの取れている演奏。そう、煽情的でありながら、端正な演奏となっている。楽器をたっぷりと鳴らし、豊麗で骨太な音楽を奏で上げながら、繊細でもある。
なるほど、音楽を存分に煽り、艶っぽく演奏する局面が、あちこちに散りばめられています。その一方で、これもまた彼女の多くの演奏で見受けられる特徴だと思うのですが、ピンと張りつめた緊張感が強く感じられもする。ストイックでもある。であるが故に、とても凝縮度の高い演奏となっている。凛々しくもある。そのようなこともあって、外面を飾り立てるというよりも、内面を深く掘り下げてゆく演奏ぶりだと言えそう。
そんなこんなによって、熱くて、それでいて、冴え冴えとした音楽が鳴り響くこととなっている。
そのようなチョンに対して、ここでのデュトワも、色彩感に満ちていて、生気に溢れた演奏を繰り広げてくれている。しかも、品格が高くて、エレガントである。

なんとも立派な演奏であります。
であるとともに、多面的な魅力を備えている、なんとも素敵な演奏であります。