ボニング&ナショナル・フィルによるレスピーギの≪風変わりな店≫を聴いて

ボニング&ナショナル・フィルによるレスピーギの≪風変わりな店≫(1981年録音)を聴いてみました。


この作品は、ロッシーニが晩年に作曲した≪老いのいたずら≫という小品集から旋律を借りながら、レスピーギがバレエ音楽に仕立てたもの。20世紀前半のバレエ界をリードしていたバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)を主宰していたディアギレフから依頼を受けて作曲され、1919年に初演されています。
レスピーギのオーケストレーションの巧みさがよく表されている、カラフルで多彩な曲想を身にまとっている音楽となっています。そして、オシャレな雰囲気に包まれた、チャーミングな作品となっている。

さて、ここでの演奏は、バレエ音楽を得意としている指揮者ボニング(1930-)らしく、手際の良い、かつ精彩豊かなものとなっています。作品のツボを押さえながら、真摯に音楽を奏でている。そのうえで、華やかで、品が良くて、キビキビとしていて、音楽が弾んでいる。大袈裟にならない範囲で、ドラマティックでもある。そして、このような作品に不可欠な「ウキウキ感」が高い。
更に言えば、仕上げが丹念で、美しい装いをしている。ここの部分は、ボニングの多くの演奏に共通していて(バレエ音楽においても、オペラにおいても)、この指揮者の美質であると言えましょう。
一言で言えば、とてもオシャレな演奏。

ボニングは、今一つ注目度の高くない指揮者だと言えましょうが、音楽を纏め上げる能力に優れていて、音楽センスの豊かな指揮者であると思っています。そして、この≪風変わりな店≫は、そういったことが如実に表されている演奏となっている。
(ボニングは、ソプラノ歌手のサザーランドの夫君として名が知られていると言えるように思えます。音盤も、サザーランドと組んでのオペラ作品が多い。)
この素敵な作品の魅力を堪能することができるとともに、ボニングの素晴らしさを味わうことのできる、素敵な演奏であります。