ケンペ&ミュンヘン・フィルによるブラームスの交響曲第4番を聴いて
ケンペ&ミュンヘン・フィルによるブラームスの交響曲第4番(1974年録音)を聴いてみました。
1976/5/12、66歳の誕生日を1か月後に控えながら急逝したケンペ。この音盤は、死の2年前に録音されたものになります。
ケンペは、1974,75年にかけてブラームスの交響曲全集を制作していますが、これはそのスタートとなったもの。このミュンヘン・フィルとのブラームスの交響曲全集は、1950年代にベルリン・フィルと制作したものに次いで、ケンペにとっては2組の全集となりました。同時期にミュンヘン・フィルと録音を続けていたブルックナーの交響曲集とともに、最晩年のケンペの演奏ぶりを知ることのできる貴重な遺産だと言えるでしょう。
それでは、ここでの演奏について。
誠実にして、充実感たっぷりな演奏であります。 音楽を煽り立てたり、必要以上に熱狂していたりする訳ではないのですが、充分なる熱気が備わっている。と言いますか、どっしりと構えた演奏ぶりの中から、音楽のうねりが充分に伝わってくる。
更に言えば、がっしりとした構築感の中から、立体的な音像が立ち上がってくるような演奏となっている。そのためもあって、体幹のしっかりとした逞しさが感じられる。
堅実で、質実剛健。それゆえに、あからさまにロマンティシズムを追い求めているような演奏には聞こえてきません。それでいて、充分にロマンティックであり、ある種、煽情的でもあると言えそう。それは、この作品が本来的に備えているロマンティックな性格や切迫感のようなものを、そのままの形で表出してくれた結果なのだと思えます。
派手に音楽を掻き鳴らしたギラギラとした演奏とは対極にあるような音楽づくりなのですが、充分に艶やかでもある。そのうえで、凛としていて、演奏全体の佇まいが誠に美しい。
ずしりとした重みの感じられる演奏。しかも、全く堅苦しくなく、親しみや暖かみの感じられる演奏ぶりでもある。
いやはや、なんとも見事な、そして、素敵な演奏であります。