プライ&スウィトナー&シュターツカペレ・ドレスデンによるモーツァルトのアリア集を聴いて

プライ&スウィトナー&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるモーツァルトのアリア集(1966年録音)を聴いてみました。
4つのオペラから13曲のアリアを選んで録音された音盤。詳細は、お手数ですが添付写真をご参照ください。

ここに収められている歌は、暖かみに溢れたものばかり。プライならではの人情味に満ちている歌が並んでいます。まさに絶品であり、珠玉のアリア集であると言えましょう。
更に言えば、実に颯爽としている。それはあたかも、私の周りを爽やかな風が吹いていくかのよう。
キビキビとした歌い口。まろやかな声音。充分にハリがあり、かつ、適度に威勢の良い発声。フレーズは実に伸びやか。とても人懐っこくて、何もかもが自然で、しかも表情豊か。天衣無縫だとも言えそう。
そんなこんなによって、晴朗な音楽世界が、自然と立ち上がってゆく歌唱だとも言いたい。
モーツァルトはこのように歌うのだ、というお手本がここにある。そんなふうに思えてなりません。
そのような中でも、アルマヴィーヴァ伯爵に与えられたアリアなどでは、居丈高で尊大な性格もシッカリと表されている。しかしながら、それが嫌みに結びつかず、音楽的な説得力に繋がってゆくところが、プライならでは。それは、プライの人間性が反映された結果なのだとも言えそう。
(その様は、晩年の西田敏行さんが悪役を演じているときの味わいに例えられるように思えます。)
そこに加えられるスウィトナーによる凛とした指揮と、SKDの清らかな美音がまた、頗る魅力的。
モーツァルトがバリトンのために生み出してくれたアリアの魅力を、心行くまで堪能することのできる1枚。そして、聴き手を幸福感で満たしてくれる1枚。
いやはや、なんとも素敵な音盤であります。
なお、≪コジ・ファン・トゥッテ≫の第1幕で歌われるグリエルモのためのアリアは、作曲当初に書かれていたものが収録されています。このアリア、長すぎると判断されて(当盤での演奏時間は5分少々)、短めのアリアが初演前に作られ、そちらに差し替えられたのでした。それ以降、≪コジ≫を上演するに当たっては、差し替えられた短いアリアが歌われることが慣習となっています。
そんな、滅多に聴くことのできないアリアをプライによる歌で触れることができるのも、このアリア集の価値を高めてくれていると言えそう。しかも、このアリアでのプライの歌いぶりが、暖かみを湛えていつつも、とりわけ威勢が良くて、颯爽としているのであります。
ちなみに、今春、沖澤のどかさん&京響によって演奏会形式で上演された≪コジ≫でも、とても珍しいことにこの初版のアリアが採り上げられていました。






