トスカニーニ&NBC響によるR・シュトラウスの≪ドン・ファン≫≪ティル≫≪死と変容≫を聴いて

トスカニーニ&NBC響によるR・シュトラウスの≪ドン・ファン≫≪ティル≫≪死と変容≫(1951,52年録音)を聴いてみました。

いやはや、なんとも見事な演奏であります。
精緻で克明で、整然としていながら、燃焼度が高い。客観的でいながら、主情的。毅然としていて、凛とした構成美を備えていながら、情熱的でありロマンティックでもある。そして、音楽全体が逞しい生命力を宿している。その推進力たるや、凄まじいものがあります。渦を巻きながら音楽が突き進んでゆく、といった趣きがある。
そんなこんなの様に、ただただ唖然とするばかり。
しかも、音楽の身のこなしがとてもしなやか。そう、決して力づくな演奏になっている訳ではないのです。剛毅でありながら、弾力性を帯びてもいる。そのうえで、カンタービレが存分に効いている。頗る頑健な造りをしてもいる。そして、音楽がうねりにうねっている。
そのような音楽づくりをベースにしながら、R・シュトラウスならではの、目くるめくような絢爛たる音楽世界が広がってゆく。しかも、それが、全く外見を装ったものになっていない。なんとも真摯な音楽となっているのであります。そして、繰り返しになりますが、毅然とした音楽となっている。

クレンペラーをして「指揮者の中の王」と言わしめたトスカニーニ。そんなトスカニーニの音楽づくりにおけるエッセンスが詰まっている、驚嘆すべき凄演だと言えましょう。
トスカニーニによるR・シュトラウス、あまり話題に上ることが多くないように思われますが、多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい、なんとも素晴らしい演奏であります。