ムター&小澤さん&フランス国立管によるラロの≪スペイン交響曲≫を聴いて

ムター&小澤さん&フランス国立管によるラロの≪スペイン交響曲≫(1984年録音)を聴いてみました。
カラヤンが存命中に、ムターがカラヤン以外の指揮者と録音をした貴重な録音。このことは、この音盤が初めてのケースではなく、これより先にムーティとのモーツァルトがあったりもするのですが、それでも貴重な記録であると言えるのではないでしょうか。
録音当時、ムターはちょうど20歳(この録音の翌月に、21歳の誕生日を迎えています)。良い意味で奔放で、伸び伸びとした音楽を奏で上げてくれています。全体的に、率直で瑞々しい音楽になっている。そして、実に雄弁。時に煽情的を見せてくれたりする。更には、艶美でもある。そういった音楽づくりが、エキゾティックな雰囲気を湛えているこの作品に相応しい。
その一方で、落ち着き払った雰囲気も漂ってきています。それは、共演者が小澤さんであることも影響しているのかもしれません。とても真摯で、入念で、堅実さも窺えるのであります。ある種の風格のようなものも感じられる。
前者と後者のバランスの取り方が巧くて、それが独特の魅力を生み出してくる、そんな≪スペイン交響曲≫となっています。
若き日のムターによる記録として、意義深い演奏だと言えましょう。そこには、ある種の「完成されたヴァイオリニスト」をしての姿が刻まれているとも思える。
一方の小澤さんは、やるべきことをキチンとやり遂げながら(すなわち、艶っぽい雰囲気をシッカリと描き出しながら)、ジックリと実直に音楽を進めてゆく、というスタイル。とてもシンフォニックでもある。しかも、冒頭部分から、熱気に溢れていて、逞しくて、押し出しの強さが感じられる。なおかつ、随所で鮮烈な音楽づくりが為されてゆく。それは、ムターによる煽情的な演奏ぶりに煽られているといったこともあるのかもしれません。
若き日のムターによる、聴き応え十分な演奏。そのうえで、作品の魅力を誇張のない姿で楽しむことのできる、素敵な≪スペイン交響曲≫であります。





