チッコリーニ&マルティノン&パリ管によるラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲とピアノ協奏曲の2曲を聴いて

チッコリーニ&マルティノン&パリ管によるラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲と、ピアノ協奏曲の2曲(1974年録音)を聴いてみました。

精巧な演奏であると言えましょう。明瞭な演奏ぶりだとも言えそう。それは、チッコリーニのピアノにも、マルティノンの指揮にも当てはまる。
全体的に、隈取りのハッキリとした演奏になっています。そう、曖昧模糊としたところがない。フランス音楽ならではの(それは取りも直さず、ラヴェルならではの、とも言えるのでしょうが)エレガントさのようなものも薄い。それよりも、もっと現実的な音がしている。
更に言えば、決して骨太という訳ではないのですが、逞しさが備わっている。それは、マルティノンの音楽づくりにおいて、特に顕著。それでいて、音楽を鷲掴みしたような演奏ぶりではなく、精妙でもある。この点は、特にチッコリーニに顕著であると言えそうなのですが。とりわけ、両手による協奏曲の緩徐楽章でのチッコリーニの演奏ぶりは、当盤での演奏において最も夢幻的な音楽世界が広がっていて、かつ、冴え冴えとしていて、頗る美しい。
そんなこんなのうえで、色彩感に溢れています。決して原色系の色合いをしている訳ではなく、かつ、派手にならない範囲で、煌びやかでもある。この辺りは、パリ管の体質に依るところが大きいのでしょう。
しかも、チッコリーニの演奏ぶりからは、敏捷性が感じられもする。それがまた、この両曲の性格に相応しい。

ちょっとユニークな演奏だと言えるかしれないのですが、とても魅力的な演奏になっている。そんなふうに言いたくなります。