ミュンシュ&ボストン響によるシューベルトの≪ザ・グレート≫を聴いて

ミュンシュ&ボストン響によるシューベルトの≪ザ・グレート≫(1958年録音)を聴いてみました。

なんとも壮大で、豪壮で、逞しい演奏が展開されています。とても鮮烈でもある。頗る潔い演奏だとも言いたい。
快速なテンポで飛ばしていて、音楽はキビキビと進められてゆく。それは、後ろを振り返るようなことは一切しない、といったスタンスだとも言えそう。
しかも、力でグイグイと押してゆく。それはもう、痛快なまでに。なるほど、作品を力でねじ伏せてゆくような傾向が無きにしもあらずなのですが、それでも音楽が崩壊するようなことは全くありません。むしろ、作品は、ミュンシュの演奏ぶりを嬉々として受けているかのよう。
とにもかくにも、音楽に対する情熱と、「音」の実在感の凄まじい演奏が繰り広げられています。音楽全体が、実に壮健な姿をしていて、頗る熱い。そして、壮麗極まりない。男気に溢れている演奏だとも言えましょう。そのうえで、輪郭線がクッキリとしていて、何もかもがクリアな演奏となっている。とても明朗でもある。
更には、音楽が硬直するようなことは全くなく、しなやかな音楽が奏で上げられています。そうであるが故に、頑健な演奏ぶりでありながらも、シューベルトならではの抒情味が仄かに立ち昇ってくる、といった風情を湛えてもいる。

なんとも見事な、そして、頗る魅力的な演奏であります。
そのうえで、元気を貰える≪ザ・グレート≫となっている。そんなふうに言いたくなる演奏でもあります。