アラウによるショパンの≪スケルツォ≫全4曲を聴いて

アラウによるCD6枚から成るショパン集から≪スケルツォ≫全4曲(1984年録音)を聴いてみました。
アラウ(1903-1991)晩年の録音。この6枚組CDには1973年から1984年に録音された演奏が収められていますが、このスケルツォ集は、その最も後年のものになります。
荘重な演奏が繰り広げられています。ショパンに対するものとしては、重厚さの感じられる演奏になっていると言いたい。それはまるで、ドイツ音楽を聴いているかのよう。
華麗とか、耽美的とか、センチメンタルとか、そういった方向の印象にはいかない演奏だとも言えましょう。
しかも、めくるめく情熱が表されることもしばしば。かなりアグレッシブな演奏が展開されています。アラウがこのような方向性を示すのは、珍しいことなのではないでしょうか。大きな起伏が採られていて、ドラマティックでもある。
そのようなこともあり、かなりスケールの大きな演奏となっています。恰幅が良く、風格豊かでもある。建築的な堅牢さのようなものが感じられる。そして、深々とした情感を湛えている演奏となっている。暖かみを帯びてもいる。包容力を伴った逞しさと形容したくなる味わいを備えているとも言いたい。
そのうえで、幹の太さのようなものが感じられる演奏となっている。
聴き応え十分な、素晴らしいショパン演奏であります。なんとも言えない、独特な魅力を湛えている。
噛めば噛むほどに味が出てくるようなショパン演奏。そんなふうにも言いたくなる演奏であります。





