モーツァルトの命日に、ウェルザー=メスト&ロンドン・フィルによるモーツァルトの≪レクイエム≫を聴いて

今日はモーツァルトの命日。この日には、極力、モーツァルトの≪レクイエム≫を聴くようにしています。
そこで今年は、ウェルザー=メスト&ロンドン・フィルによる演奏(1989年録音)で聴いてみることにしました。
ウェルザー=メストは1990年にロンドン・フィルの音楽監督に就任していますので、当盤は、その前年に録音されたものとなります。29歳の誕生日を迎える前の演奏。
速めのテンポで、粘るようなことは皆無。颯爽としていて、清新な演奏が展開されています。 スッキリとした演奏になってもいる。
とは言うものの、大人しい演奏になっている訳ではありません。十分に生気に富んでいて、適度に劇的でもある。しかも、誇張のない演奏となっている。全体を通じて、ケレン味が全く感じられない。それがまた、スッキリとした印象や清々しさを増しているのでありましょう。
更には、分離が良くて、克明な音楽づくりが為されている。そのために、澄明な音楽が鳴り響くこととなっている。
そんなこんなを含めて、瑞々しい感性に裏打ちされた演奏が展開されていると言いたい。とても率直な演奏となっている。更には、音楽センスの豊かさや、音楽に対する誠実さが感じられもする。
その結果として、ピュアな美しさを湛えたモーツァルトの≪レクイエム≫が姿を現すこととなっている。
心洗われるような演奏。そして、この作品の魅力を無垢な形で、しかも、活力の漲っている形で味わうことのできる演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。
あまり話題に上ることの多くない演奏だと思えますが、多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい、素敵な演奏であります。





