ビーチャム&ロイヤル・フィルによるドヴォルザークの交響曲第8番を聴いて

ビーチャム&ロイヤル・フィルによるドヴォルザークの交響曲第8番(1959年ライヴ)を聴いてみました。

逞しい生命力が漲っていて、起伏に富んでいるドラマティックな演奏が繰り広げられています。
ビーチャムにしては、かなり前のめりになりながらのアグレッシブな演奏だと言えるのではないでしょうか。かなりホットな演奏ぶりが示されている。しかも、骨太でもある。頑健な演奏だとも言えそう。そして、克明にして、彫琢の深い演奏となっている。
急速楽章では、推進力の大きな音楽が奏で上げられています。音楽が存分にうねっている。とりわけ第1楽章では、渦を巻くようにして突き進んでゆく。
更には、恰幅が良くて、ダイナミックでもあります。歌謡性に富んでいて、息遣いが豊かでもあり、そのことによって輝かしさが宿ることになってもいる。
その一方で、第2楽章では、抒情的な美しさを湛えた音楽となっています。ノスタルジックな感興にも不足はない。しかも、中間部では大きな盛り上がりを築いてもいる。そして、第3楽章では哀愁に満ちた音楽が鳴り響いている。
そんなこんなの振幅が、とても大きな演奏となっています。頗る感興豊かでもある。こういった点は、ライヴだということにも依っているのでしょう。
しかも、誇張が微塵も感じられない。それは、心からの共感を裏付けにしているからなのだと言いたい。

聴衆を前にした時のビーチャムの演奏がどのようなものであったのかを知ることのできる、貴重な記録。そんなふうに言えるのではないでしょうか。
しかも、そのようなことを度外視しても、頗る素敵な演奏ぶりを示している、貴重な記録であると思います。