デュメイ&ピリスによるベートーヴェンの≪クロイツェル≫を聴いて
デュメイ&ピリスによるベートーヴェンのヴァイオリンソナタ全集から≪クロイツェル≫(2002年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
甘美でいて、情熱的かつ刺激的でありつつ、端正な佇まいを湛えている演奏となっています。
デュメイによる音楽づくりは、極めてダイナミックで、なおかつ、パッショネートなものとなっています。しかもそれは、艶やかな美音をベースにしたもの。そのため、どんなに激しく、そして、起伏の大きな音楽づくりを志向しても(デュメイは、随所で果敢に音をぶつけてきている)、音楽の美感を損ねるようなことはない。
そのようなデュメイに対して、ピリスによるピアノは、キリッとしていて、凛としたものとなっている。知的でもある。そのうえで、デュメイに感化されているのでしょう、いつも彼女以上にホットな演奏ぶりとなっているように思えます。
この作品に相応しく、ここでの両者は、火花を散らすような演奏ぶりが展開されていて、剛健にして壮麗な音楽世界を築き上げつつも、決してオーバーヒートすることなく、凛々しくて、艶やかな音楽が奏で上げられてゆく。しかも、気品があり、かつ、華やかに。
デュメイと、ピリスと、そして作品と、その三者の魅力がビタッと嵌っている演奏。その様は、実に見事なものであると言いたい。
ズシリとした手応えを持っていて、かつ、独自の魅力を備えている、なんとも素敵な演奏であります。