ラトル&ロンドン響によるヤナーチェクの≪シンフォニエッタ≫を聴いて

ラトル&ロンドン響によるヤナーチェクの≪シンフォニエッタ≫(2018年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

とても端正なヤナーチェク演奏となっています。
鮮烈に音楽を掻き鳴らしながら煽情的な演奏を繰り広げるというよりも、整然とした音楽づくりが為されている。そのために、土俗的な性格は薄い。それよりももっと、洗練味を帯びた音楽が鳴り響いています。
とは言うものの、シッカリとした運動性を備えている。決して刺激的ではないものの、生気を帯びた音楽となっています。しかも、第3曲目に象徴されるように、抒情性の豊かさを湛えたものとなっている。
そのうえで、仕上げは丹念。そこには、ロンドン響の機能性の高さも寄与しているように思われます。音楽が過度に豊麗になるようなことはなく、キリっと引き締まっている。そして、響きはニュートラルなものとなっている。
アクの強くないヤナーチェク演奏。
そんなこんなによって、ローカル色が薄くて、純音楽的な美しさが滲み出てくる音楽が鳴り響くこととなっている。

ラトルの豊かな音楽性と、ロンドン響の美質が融合された、個性的でありつつも、とても魅力的なヤナーチェク演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。
更には、ヤナーチェクの作品があまり得意でない聴き手にもお勧めできる演奏だと言えるように思えます。