シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデンによるシューマンの≪春≫を聴いて

シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるシューマンの交響曲全集から≪春≫(1993年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

この演奏を支配しているものは、それは、SKDの美しい響きであると言えるように思います。清潔感に溢れていて、しかも、輝かしい響きに覆い尽くされている。格調が高くて、ピュアな美しさを湛えている。
そのうえで、シューマンらしい情熱とロマンティシズムに溢れた演奏となっています。とは言いましても、あまりドロドロしていない。神経質な様相は薄く、開放的で幸福感に満ちていて、流麗。立体的であり、克明でもある。そして、この作品に相応しい律動感に溢れていて、歓びに満ちている。推進力に富んでいて、音楽が適度にうねっている。音楽の息遣いが頗る自然で、しなやかで伸びやかもである。そんなこんなのために、親しみの湧いてくるシューマン演奏となっていると言いたい。
更には、豊満な音楽にはなっておらずに、キリっと引き締まっている。そのような演奏ぶりによって、凛とした佇まいをした音楽が鳴り響いている。そして、生命力豊かな音楽が浮かび上がってくる演奏となっている。そんなふうにも言いたくなります。

聴いていて、幸福感を身体中で味わうことのできる、素敵なシューマン演奏であります。