ミュンシュ&ボストン響によるラヴェルの≪ダフニスとクロエ≫全曲(1955年録音)を聴いて

ミュンシュ&ボストン響によるラヴェルの≪ダフニスとクロエ≫全曲(1955年録音)を聴いてみました。
ミュンシュ&ボストン響のコンビは、1961年にも≪ダフニスとクロエ≫全曲をRCAに録音していますので、こちらは旧盤ということになります。

明快であり、かつ、エネルギッシュでダイナミックな演奏であります。熱い血潮の滾っている演奏だとも言えそう。
まずもって、輪郭線のはっきりとした克明な演奏が繰り広げられています。曖昧なものがない、明瞭な音楽が鳴り響いている。とは言うものの、細部に対する執拗なまでのこだわり、と言ったようなものを持ち過ぎることがなく、全体像をバクッと掴んで、その姿を率直に提示してゆく、というスタイルが採られていると言えそう。そのようなこともあって、些事に捉われない豪快な音楽が奏で上げられていると言いたい。起伏が頗る大きくもある。
そのうえで、大いなる熱狂が織り込まれているのであります。音楽が、随所でうねりにうねっている。そして、逞しい生命力に溢れていて、力感に溢れた音楽が掻き鳴らされている。そのような演奏ぶりによって、聴き手をグイグイと引っ張ってゆく。とりわけ、終曲の「全員の踊り」での昂揚感は、なんとも見事。オケを、そして音楽を、存分にドライヴしてくれている。
全編を通じて、男気の漲っている演奏だと言いたい。そして、壮快にして雄渾な演奏となっている。まさに、ミュンシュ節が全開の、胸のすく痛快極まりない演奏だと言えましょう。それでいて、明晰を極めているところが、実に尊くて、素晴らしい。
1955年の録音でありますが、モノラルではなくステレオでの録音。そのこともあって、音の輪郭がクッキリとしているのがまた、実に嬉しい。

ミュンシュの妙技を堪能することのでき、かつ、作品の魅力を存分に味わうことのできる、素晴らしい演奏。
クリュイタンス&パリ音楽院管盤とともに、私の最も愛する≪ダフニスとクロエ≫の一つであります。