バーンスタイン&コンセルトヘボウ管によるシューベルトの≪ザ・グレート≫を聴いて

バーンスタイン&コンセルトヘボウ管によるシューベルトの≪ザ・グレート≫(1987年録音)を聴いてみました。

明朗でありつつも、コクが深くて、濃密な演奏が繰り広げられています。
後半部分の「濃密な演奏」という点は、冒頭のホルンソロの最後の部分を、音をしぼめながら奏で上げているところからも窺えます。また、その後の序奏部の弦楽器群による歌い方には、一種の妖艶さが漂ってもいる。
と言いながらも、そういった表現が嫌味に感じられない。少なくとも、私にとっては。それは、バーンスタインの感受性の豊かさが、率直に滲み出た結果であるからなのではあにでしょうか。
そのような序奏部を経て主部に入ると、活力に溢れた音楽が掻き鳴らされてゆく。最晩年のバーンスタインに特徴的だった極端なまでのテンポの遅さは、ここでは見当たりません。推進力に満ちていて、快活に進められてゆき、明朗な音楽が鳴り響いている。
とは言うものの、サラサラと流れてゆく訳でもありません。ジックリと腰の据わった音楽が奏で上げられている。気宇の大きな演奏になっていて、かつ、一音一音に込められているカロリーが頗る大きいと言いたい。そのうえで、第1楽章の終結部では、テンポをグッと抑えて、壮麗な形で楽章を閉じる。
総じて、明朗でいて、コクの深い音楽になっていると言えましょう。更には、起伏の大きな音楽となってもいる。
そのようなアプローチは、第2楽章になっても変わらない。やや速めのテンポを基調としながら、流麗な音楽が奏で上げられている。歌いぶりが朗らかでもある。そのような中で、フレーズの区切りの箇所などではテンポを落として、コクの深さが加えられもする。また、第2主題では、愁いの表情を見せるのがまた、誠に印象的。更には、練習番号I(248小節目)に向かって、切迫感を伴いながら音楽が高揚してゆく様には、戦慄を覚えるほどの凄まじさがある。
後半の2つの楽章についても、同様な音楽づくりが為されていると言えましょう。速めのテンポでグイグイと押してゆきながら、生気に満ちた音楽が奏で上げられています。とりわけ、最終楽章では、音楽が存分に躍動していて、途轍もないほどの推進力をもって押し進められている。気宇が大きくもある。そして、壮麗で、輝かしい。そのような演奏ぶりが、「グレート」という愛称を持つこの交響曲には、誠に似つかわしい。

実に立派な、そして、多面的な魅力を備えている演奏。そのうえで、この作品の魅力を存分に味わうことのできる演奏となっている。
いやはや、なんとも素晴らしい演奏であります。