ハイティンク&バイエルン放送響によるショスタコーヴィチの交響曲第15番を聴いて
ハイティンク&バイエルン放送響(BRSO)によるショスタコーヴィチの交響曲第15番(2015年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
明快にして巧緻な演奏が展開されています。それは、ハイティンクによる音楽づくや、音楽に対する志向に加えて、BRSOの機能性の高さや、ニュートラルな響きや、といったものに負うところも大きいように思えます。
全編を通じて、入念にして闊達な音楽づくりが為されています。ハイティンクらしい、篤実な演奏ぶりでもある。それゆえに、折り目正しくて、見通しの良い音楽が鳴り響いている。
更には、この作品が持っている諧謔味が、屈託のない形で表されていると言いたくなります。いや、誠実な態度で奏で上げられているがために、諧謔味がより一層鮮明で、かつ、真実味を帯びて立ち昇ってきている、と言えそう。
なるほど、第2楽章などでは、もともとの曲想がそうであることもあって、とても冴え冴えとした音楽が鳴り響いています。とは言うものの、冷徹な音楽になるようなことはない。これは全楽章を通じて言えるのですが、とても暖かみのある音楽となっている。そのようなこともあって、ショスタコーヴィチならではの「ニヒルな」雰囲気というものは薄い。
そのうえで、頗る端正な演奏となっている。そして、BRSOの優秀さも含めて、純音楽的な美しさが際立っていると言いたい。
ハイティンクとBRSOの、両者の美質に溢れている、聴き応え十分な演奏。
独特な魅力を湛えているショスタコーヴィチ演奏だと言いたい。特に、そのような方向性が、この作品に適しているようにも思える。
ハイティンクは1977年~1984年にかけて、コンセルトヘボウ管とロンドン・フィルとを振り分けながらショスタコーヴィチの交響曲全集を制作していて、そちらのほうが広く知られていると思われますが、このBRSOとの第15番も、多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい素敵なショスタコーヴィチ演奏となっています。