ブレンデル&アバド&ロンドン響によるシューマンのピアノ協奏曲とウェーバーのピアノ小協奏曲を聴いて

ブレンデル&アバド&ロンドン響によるシューマンのピアノ協奏曲とウェーバーのピアノ小協奏曲(1979年録音)を聴いてみました。

この音盤は、私にとっては両曲を最初に聴き込んだものになります。いわば「刷り込み盤」。そのようなこともありまして、いまだに両曲のマイベスト盤が、こちらになっています。

シューマンでは、端正でありつつも、十二分に情熱の迸りが感じられます。
或る時はしなやかに、或る時は柔らかく、或る時は逞しく、或る時は重厚感を持たせながら、音楽は奏で上げられている。清々しくもドロドロとした情念が織り込まれた(一般的には矛盾してしまいそうな要素が、自然な形で体現されている)音楽が展開されているとも言えそう。そのような演奏ぶりが、シューマンの作品に相応しい。
更には、息遣いがとても豊かな演奏となっている。そのうえで、抒情的な美しさを湛えてもいる。そのようなこともあって、情熱的でありつつも、頗るチャーミングなシューマン演奏となっています。
一方のウェーバーもまた、端正でありつつ、劇的であります。そして、この作品ならではの、可憐で、かつ、お洒落な感覚に溢れてもいる。
ところで、ウェーバーと言いますと、どうしてもオペラと関連付けたくなるのですが、この演奏でも或る種のオペラティックな感興が滲み出ています。それ故に、覇気に満ちてもいる。それでいて、しなやかで、歌心に満ち、抒情的であり、華麗でもある。こういった点においては、アバドの貢献度が高いのではないでしょうか。

両曲ともに、ホットでありながら理知的であり、なによりも音楽センスの高さが感じられる演奏となっている。そして、作品の魅力がストレートに伝わってくる演奏となっている。
私にとって宝物だと言える、素敵な素敵な演奏であります。