マルツィ&フリッチャイ&RIAS響によるドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲を聴いて

マルツィ&フリッチャイ&RIAS響によるドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲(1953年録音)を聴いてみました。

マルツィ(1924-1979)はルーマニア出身の女流ヴァイオリニスト。そのマルツィによるヴァイオリンは、とても体当り的なもの。情熱の迸りが感じられ、そこここで火花が散っています。更には、ロマンティシズムに溢れてもいる。
そもそも、このヴァイオリン協奏曲自体が、そのような性格を帯びていると思えるだけに、その作品像を彼女はあますところなく描き出してくれていると言えそう。それも、実に見事な形で。
しかも、ひたむきさの感じられる演奏になっています。どこにも誇張がなく、真実味に溢れてもいる。
そのうえで、とても伸びやかで、それでいて、キュッと引き締まっている。十分すぎるほどに熱いのですが、決して豊満に過ぎるようなことはなく、理知的な演奏となっている。
更には、響きは頗る艶やか。そのこともあって、ストイックな音楽として鳴り響くことはなく、ロマンティックな感興を湛えたものとなっている。
フリッチャイの指揮も、同じようなことが言えましょう。十分に熱いのに、理知的である。それでいて、情感豊かでもある。

フリッチャイの見事な指揮も相まって、マルツィの美質が随所に窺える演奏だと言えましょう。そして、聴き応え十分で、かつ、作品の魅力をストレートに味わうことのできる、素敵な素敵な演奏でだと言いたい。