ツィマーマン&バーンスタイン&ウィーン・フィルによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を聴いて

ツィマーマン&バーンスタイン&ウィーン・フィルによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番(1989年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

多感にしてニュアンス豊かで、かつ、壮健な演奏となっています。しかも、緊張感がありつつも、ふくよかでしなやかでもある。そのうえで、彫りが深くて、起伏に富んでいる。
このような特徴は、ツィマーマンによるピアノにおいて顕著。そう、とても感受性の豊かなピアノ演奏が繰り広げられているのであります。しかも、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の中で唯一の短調作品であるこの曲に相応しい悲壮感と言いましょうか、悲しみの中から滲み出てくる猛々しさや、切迫感や、焦燥感や、といった性格も、リリシズムを湛えながらクッキリと描き出されている。繊細で、清冽で、抒情性に溢れたピアノ演奏となっていつつも、凛々しくて律動感に富んだ音楽を奏で上げてくれているのであります。
そのようなツィマーマンに対して、バーンスタインは、ジックリと腰を据えながら厚みのある音楽づくりで応えてくれている。力感に溢れていて、壮麗な音楽を奏で上げてくれているとも言いたい。しかも、大言壮語するようなことはなく、ゆとりを持ちながら音楽が鳴り響かせている。そのうえで、とてもしなやかでもある。最終楽章での躍動感などは、バーンスタインだからこそだと言えましょう。
更に言えば、ウィーン・フィルならではの、柔らかくて、まろやかで、艶やかな美音が、この演奏の魅力を一層引き立ててくれているのが、なんとも嬉しい。

ツィマーマンとバーンスタインのそれぞれの個性をタップリと味わうことができ、なおかつ、この作品の音楽世界にドップリと浸ることのできる演奏。
聴き応え十分な、頗る素敵な演奏であります。