テンシュテット&ロンドン・フィルによるR・シュトラウスの≪ツァラトゥストラかく語りき≫を聴いて

テンシュテット&ロンドン・フィルによるR・シュトラウスの≪ツァラトゥストラかく語りき≫(1989年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

遅めのテンポを採りながらの、悠然とした演奏が繰り広げられています。なんとも恰幅が良くて、風格豊かな演奏となっている。
その一方で、開始して8分ほどが経過してからの「喜びと情熱について」辺りから、音楽がうねりながら進められてゆく。とても激情的で、ホットな演奏が鳴り響くこととなっている。その熱い血潮が燃え滾っているような演奏ぶりは、情熱家のテンシュテットならではのもの。しかも、決してお祭り騒ぎにならずに、深く根を張ったような音楽づくりが示されていて、音楽が浮足立つようなことがないのがまた、見事であります。
更には、緊密度の高い演奏だとも言いたい。いたずらに外に向かってエネルギーが放射するのみ、といったようなことはありません。R・シュトラウスならではの壮麗さを存分に備えていて、かつ、十分にエネルギッシュでありつつ、凝縮度の高い音楽が響き渡っているのであります。

気宇が大きくて毅然としていて、しかも、ホットな演奏。そのようなこともあって、知情のバランスに優れている演奏だと言いたくなります。適度な力感や厚みを備えてもいる。そのうえで、均整の取れた美観を呈している演奏となっている。
テンシュテットの美質が活かされている、聴き応え十分な≪ツァラトゥストラかく語りき≫であります。